良い 幸せを呼ぶ金の豚 1930年代英国製 真鍮

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かつて道を見失っていた頃、立ち寄った骨董店で目に留まった金の豚を買った。金といってもGoldではなく真鍮:brassである。真鍮工芸が盛んであった1930年代のイギリス製だそうだ。確かに現代の金型による量産品ではなく金工職人の手による逸品である。豚は東洋では怠惰の象徴として侮蔑的に引き出されるが西洋では逆に古くから富と繁栄のシンボルでもある。ゆえに豚の意匠を汲んだアクセサリーがお守り的に扱われてきた歴史がある。わざわざ金で豚を形作るのは西洋の発想で、日本でも焼物による貯金箱や蚊取線香の香炉に豚が重用されるのとは起源を異にする この金の豚が幸運を呼ぶ、などと霊感商法的なことをそのまま信ずるつもりはない。しかし幸福論について少し語らせていただくならば、幸せという概念ほど絶対主観的なものはないと思っている。心身がどのような境遇にある人でも、自分が幸せと信ずるに足りるならそれ以上に幸せなことはない。しかし私たちの主観性は集団社会に埋没し、他人より充たされているかの相対的な指標に気を取られるものである。それが悪い、ということではなく幸福感とはそういう曖昧なものなのである私の場合、この豚を手にしたから幸せになるとは思わないが、すでに一定条件で充たされている自覚があるからこそ、通りすがりの骨董屋で決して安くない財を金の豚に替えるなどという行動に繋がったとも言える。心身を充たす財に事足りぬ状態ではこのような無用の長物を求めることはなく、迷わず豚肉を買うだろう。しかし逆に、真に充たされていてもまたこのような無用の長物を気に留め、縋り求める心境にもなることもない。つまりは豚が幸福を呼び込んだのではなく、一定の幸福が豚を呼び寄せたことになる 主観を豚に戻そう。その理が通るならば金の豚は一定の幸福感を得た人の手を渡り歩くことになる。店主の弁による由来を信ずるなら、すでに人の一生を超える90年近くの時を駆け、地球を半周してはるばる日本まで一定の幸せ者の手から手を渡り私の元に来たことになる。そうなるとこの豚が幸福を呼ぶ連鎖の起因ではなく中間点として位置づくこともまた結果としての事実となり、富と繁栄の象徴として裏打ちされた付加価値が引き上げたこの豚の値付けにも合点がいくまた次の幸せ者に、さらなる幸運を呼んでくれると信じることにしよう重さ347g、長さ16cm、高さ8cm

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